八月の雨

ヤシの木が、頭の上の方で葉をこすらせ、まるで焚火のようにパチパチと音を立て始めると、あと1時間もすれば空は厚い雲に覆われる。皆、慌ただしく家に自転車を走らせる。間もなくすると、雨が地面に容赦なく落ちはじめる。目の前は白くかすみ、全ての音は雨音にのみこまれ、凹みはあっという間に膝丈ほどの水たまりになる。人々はただ、雨がやむのをじっと待つ。一時間ほどして、少し明るくなると、鳥がさえずり始め、屋根の下で時を待っていた人々が一斉に移動し始め、町はクラクションやベルの合唱へとかわる。葉も花も家も何もかも、ほこりを洗い落とし、水滴をのせながら揺れている。ベンガルの大地は様々な赤色をつくり、その向こうに大きな黄金色の太陽が姿を現す。雨のにおいが肌に着く頃に。