花つれづれ

近頃町を歩くと辛夷(こぶし)の木が多さに驚く。弾けるように咲く真白な花の様は、少し遠目からみるとひときわ目立っている。昨日今日と雨が降り続いた。アスファルトの上に花模様ができている。まるで傘からこぼれ落ちた雫のよう、重力に逆らわずその木のもとに花がある。私にとって辛夷はいつもの道に淡々と在るようで、春が近づくまでそれほど意識しないが、つぼみがふくらみはじめた頃から軽やかに開き散る姿までは時の見張り番のように存在感を増す。
春は目白のポポタムさんでの展覧会が2年続き、その時には自由学園明日館で夜桜を楽しんだ。桜の吹雪く様は、形とどまる事の無い間(ま)が姿になって現れる。そこに風を、そこに匂いを、そこに気配をかんじる。花びらの渦に巻かれた時はただ立ちつくすしかない。桜吹雪は見えにくいものや触れにくいものを知らせてくれる。