たんぽぽの頃

昨日はお彼岸に叶わなかったお墓参りに行く。
私の家のお墓は再度山の入口、神戸の町の中心からも歩いて行ける便利な場所にあり、今の家からは歩いて30分もかからない。
ここに引っ越してきてから、何かがあると一人でお墓に行くようになった。
昨日は父親の眠る墓の周りを、米粒ほどの大きさの薄紫の花やスミレが咲いていた。蟻になって散歩したらどんなに芳しく楽しいだろうと思った。
お墓に向かって最近あったことを、言葉にしたりしなかったり、話しかけていると心が落ち着く。時には悩みを相談する。
昨日はあっと言う間に夕方になっていて、山際をざわざわとイノシシが近づいてきた。
朝に大きな地震があったばかりだけど、イノシシがいるということは、まずまず大丈夫なのかなと思う。阪神大震災の時は、動物たちの姿が消えたと聞いているから。

墓地の入口を出ると、大阪や奈良、紀州の山々まで見渡せる。空と海が交じり合って世界が広がっている。
坂の途中には、アスファルトの割れ目から可憐な花が顔を出していて今がとっても愛おしい。
黄色いたんぽぽは、まだ綿毛になる前。
西洋タンポポの茎はたっぷり水が吸うためにか見事な筒になっている。
綿毛となった白いドームは宇宙のゆりかごみたいだ。
ある時、風に吹かれてドームからひとつひとつ種が旅立つ。
そしてどこかに辿り着き、根を広げ、また花を咲かせる。
もうすぐ、たんぽぽの旅立ちが町中にあふれる。