長い休み

もうすぐ学校は、ひと月の休みに入る。インドではこの一番よい季節に、各地で祭りがあり、休みを取る。
21/09/08
ハヌマーンの絵がやっと完成した。いつだったかラーマヤナの物語を読んだ、心に残る。宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」にもラーマヤナの話は出てくる。物語を読むまでは、そのこともピンときていなかった。次回日本での展覧会をぜひここでしてみたい、と考えているところも宮崎作品ゆかりの土地だと知る。点は急に線になる。考えの及ばないところにベクトルは向かう。それにしてもハヌマーンが完成し、やっとスタートについた気持ちだ。長い休みを前にして、町は緑の虫が大量発生している。店の軒先には青々と茂った緑の葉がつられている。これは虫を集める効果があるらしい。
22/09/08
大きな声でロビンソンを歌う。周りでは神戸ビエンナーレについて訊いてくる学生がいる。事務局の壁に情報が載っているそうだ。神戸はタゴールが始めて日本についた場所。そしてその港に会場がつくられるわけだ。神戸にギタンジャリの一節をおくる。
23/09/08
水浸しの中でターリーを食べる。北インドに厚いモンスーンがかかっているらしい。疲れてすぐ眠る。
24/09/08
あさこさんが藍たてをしている。夕暮れ雨上がる。
25/09/08
ただたつ。ただいきる。
26/09/08
帰り道、暗闇の中に立つ八百屋や天ぷら屋。その炎は美しい。二軒ともなじみになり、立ち寄るのも楽しい。八百屋で知り合いの息子に会い、夫婦の営む中華料理屋で夕食をとることにした。ベンガル語を教わりながらお腹いっぱいあんかけご飯を食べる。
27/09/08
今日はとても落ち着かない一日だった。村に出かけようと学校を出る。かよさんと偶然会い、チャイ屋でお茶。一緒に村へ行く。天秤を担いだダヒ(ヨーグルト)売りのおじさんがやってくる。テラコッタの器に葉っぱで作ったスプーン、ひとつ3ルピー(9円)。夕方庭で花のスケッチをしていると大家さんが手作りケーキを持って遊びに来てくれる。私にあだ名も作ってくれる。ヒラディディ、ヒラはダイヤモンドでディディはお姉さんの総称。考えつかない一日。
28/09/08
雨が少しずつ小降りになり、鳥が鳴き始める。雨の中の花のスケッチ。しっかり口をむすんだつぼみは水を多くふくんでいる。そしていつしか外界と呼吸しはじめる。白いゆりの花は空に向け飛び立つようにひらき、その頃には若い香りが辺りを包むのだ。ミニアチュール作業再開。
29/09/08
デッサンモデルのエクラムダーは、味わい深い顔をしている。だからいつも気になって遠くから見ていた。今日誰かが私の前にすっと立っていて、顔を上げるとエクラムダーだった。このところ心が硬くなっていた。
30/09/08
今日もエクラムダーが現れた。小学校ではバザーが開かれている。グランドの向こうには霧がかかる。夜の幕をおろしている。
01/10/08
久しぶりにインターネット屋に行く。回線が中断し、2時間待ったが、そのまま使えず。お。。ここはインドだったっけ?と思う。
02/10/08
新しい日本人が到着。ソウヘイ。はじめて我が家で会食をする。
03/10/08
友達が来る。あさこさんと駅で迎える。蛍ツリーをみに村のはずれに行く。蛍は決まった時間になると急に瞬きだす。空を見上げると星がある。どちらも限りのある命で、そういっている私達もそう。蛍の発光体はなんだろう?というとあさこさんも同じことを考えていたという。
04/10/08
友人が来る。駅まで迎えに行く。運河のそばのサタデーマーケットに行く。月はあるが運河沿いは樹が生い茂り暗い。
05/10/08
とても美しいシバの歌を聴く。音楽とはなんとすばらしいのだろうか。
06/10/08
友人が歌をおいて帰っていく。
07/10/08
友人、体調悪し。
08/10/08
友人、体調少しあがる。
09/10/08
友人、ずいぶん回復。共にコルカタに向かう。
10/10/08
友人、回復。帰国が決まる。体調の問題ではなく7ヶ月続いた旅の幕引きを彼女自身が感じ決めたこと。次の目標を持ってインドを去る。