さくちから

どれくらい雨が降るとアスファルトの奥の大地まで雨水は届くのだろう。夜道を歩きながら思った。阪神淡路大地震の直後、裂けた道では大地がむき出しになり、地上に突き上げられたと思われるミミズの干上がった死骸は、沈黙するオフィス街の路上に数えきれないほど散在していた。今しがたまで私たちの目にはとまらぬ地下で生息していたミミズたちだ。今日は一日雨だった。ミミズの息を大地の呼吸を知る桜の樹が、黒いアスファルトの上に薄紅色の模様をつくっている。靴を脱ぎ捨てて走りたくなった。