平野の音

今しがた、祥福禅寺の雲水の方々が托鉢に通って行った。低い声が何重にもなって響き渡っている。この辺りの町並みは古くからのものが残っていて、六辻と言われる放射状に別れた交差点も存在する。声はふいに近づいてはまた消えて行く。姿をお見受けしたかと思うと離れ、また思いがけない逆方向から声がする。山のすぐ傍なのでエコーもあるはずで、音は辺り一帯を包んで行く。まるで結界の中に居るような気にさえなる。朝夕には鐘の音も響く。今頃は午前五時に鐘がなり、朝の訪れを知らせてくれる。托鉢が通り過ぎた後、鳥の話し声がより賑やかに感じるのは気のせいだろうか。