テン

バスを降りる。
雨が降るもうすぐ。そんな匂いが追いかけて来るようで、民家の壁ではこぶしほどの蜘蛛が慌ただしく姿を消して行った。と、雨。ポツリ、と額に落ちた。空を見上げる。この雨、どこから落ちて来たんだろう。あのテンからならと、公園の前でかんがえた。どうしてこんなに柔らかいの?高い遠いところから地に向かって落ちて来るの。私の手の届かない高い高いところを通り過ぎて。他のものなら大怪我だ。って次のひと雫を乞うてみた。雨は優しい。そして時に恐ろしい。次のポツリは頭の上だった。蝉の声もない夕べのことでした。