フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート6

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート6
「ワークショップ1日目」

さていよいよ2日間のワークショップ一日目です。
今回のミッションは、棚田群が世界遺産、世界農業遺産に指定されるイフガオ州で「農業」をテーマにした演劇を行う、その背景幕を高校生が描く指導です。
演劇のワークショップは、花崎せつさんがファシリテーターを担当され既に開かれました。「農業」をテーマに様々な立場の方にインタビューをし、その聞き書きによって、自らモノローグの台詞を起こして行くという手法です。
背景幕はふるさとの風景を描きます。
演劇は8月末に発表され、その後10月に選抜チームが長野県上田市で行われる演劇祭に参加するため来日します。

参加校は、この二日間に訪れた5校と、私たちの滞在しているロッジから見下ろせるImmaculate Conception Schoolを合わせて6校です。各先生1名、生徒2名。それから、会場として使用させてもらったBanaue Central School(小学校)の先生2名も参加されました。

まずは自己紹介で、少し緊張しているところをほぐします。遊びを加えながら、そして自分の好きなものを自覚できるように紹介してもらいました。
そのあとも描いて遊ぶ時間を入れます。即興ドローイングで下手な絵を笑い合ったりする時間です。
そして、自分たちの村の生き物を拾い上げて行く作業です。これは背景幕のモチーフになります。普段あたりまえすぎて意識しないと見えてこない部分を絵にして行きます。
次に、色作りの勉強をします。ほぼ絵の具を使った事がない人もいますので。基本を習った後は応用編として採集してきた植物をみながら色を作って描いてみます。
あとは、小下絵の制作に取りかかって行きます。
注意点としては絵の具の取り扱い方です。
今回使用するマテリアルは不透明の水性ペンキのため、最初から濃い色をのせると、あとから透明感を出したくても難しくなります。そういうことで、最初から濃い色をのせず、色を重ねて描いて行く練習をしました。
言葉ではわかりにくいので、デモンストレーションも行いました。

一日目のプログラムはここまでです。
生き物のモチーフを、どう風景の中に入れて行こうか?というレイアウト作業が一番の難しいところです。先生と生徒が話し合いながら進めて行きます。
棚田の風景も近景と遠景では違います。ひとつの画面の中に一年通したシーズン(水田、田植え、収穫等)が入っていてよいです。これは絵と写真の違うところです。山も植物も様々な緑があり、移ろい行く空も一色でないこと。
そして何より、絵を描く為に必要な大切なことは彼らのからだや心が一番知っています。それを引出すことができれば、、と。
少しずつそれぞれ個性のあるレイアウトが出来ていきました。
遅れているチームは夜遅くまで頑張ったようです。

2018年7月21日(土)晴れ

フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート5

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート5
「マヨヤオからフンドゥアンへ」

太陽がでた!
雨季に入り雨続きで、フィリピンに来てから朝日を拝むのは初めてです。朝から、収穫した米稲の束が一斉に干されます。
朝ご飯(米と野菜と甘いソーセージと目玉焼き)が終わり、Chayaという遠くの山まで一望できる山の頂へ向いました。
ここイフガオ州は第二次世界大戦で日本軍第14方面軍、山下奉文大将が率いた陸軍が飢餓と戦いながら進攻したところです。
このマヨヤオのNagchajan山にも日本軍は入って行きました、山の手前にあるここChayaでは20人の日本軍兵士が山頂に陣をとり、攻めてくる敵を上から銃撃しました。
とても悲しくつらいです。フィリピンに来る度に、戦争は終わっていないと感じます。私のからだがイーグルになったかのように遠くの山まで見渡せるこの美しい場所で、多くの命が失われました。
1944年から45年にかけての第二次世界大戦フィリピンでの戦争の犠牲者は、公式発表では日本兵約43万人、そしてフィリピンの一般市民の犠牲者はその二倍以上の約100万人です。
Chayaとは、天に近いくらい高い場所を言うそうです。
私たちはChayaを出発しバナウエへ帰り、撮影班のGladys,Rainel,Alvin,そしてスタッフのFaith,Rochelle,岩波康平君も合流し、午後からは学校訪問の続きで、フンドアンに向けて出発です。雨が大降りになる前に。
一校目は、Bangbang National High Schoolです。この学校からは少しだけ離れた山々が見渡せます。休火山、ピラミッドの形、女性が横たわる形。絵を描く事が好きな男子学生のアンドリューは1キロ離れたところに住んでいるらしくいつもみている山の話をしてくれました。
二校目は、Hungduan National High Schoolです。この学校はハパオ村にあります。ハパオの川ではもうすぐ収穫祭プンヌックがあるので、学生達もそれに向けて伝統的なダンスを猛練習しているところです。プンヌックは3つの村の対抗で、綱引きならぬ木を引っ掛け合って引っ張るそうです。その間に藁の人形を挟み、木の引っ張り合いで藁がこすれ人形が川下に流れたら、川下の人達は「今年の収穫も終わったか」と知るそうです。見てみたいですね。この学校では演劇にも慣れ親しんでいて、校内にステージのようなものがあったり、各所にオブジェが飾られていたり、軽音楽部が活動していたりしました。先生の部屋に入ると演劇の小道具が所狭しと飾られ、村を撮った写真をi-Padで見せてくれました。帰り際、かわいい小柄な女性が、メリエンダ(おやつ)にお米の干したものを売りに来ていたので買ってみると、ほんのり甘くて、素朴でいいなと思いました。
三校目は、Gohang National High Schoolです。ここに着く頃にはすっかり雨で、学校までの急な坂を車で行くのは難しいと思ったほどでした。それにこんな坂の向こうに本当に学校があるの?と疑いたくなるほどでした。門が見えて来たときは、やっぱりあったんだと驚いたほどです。どこが入り口か探る様に入って行くと校舎の壁のあちらこちらにカラフルな絵が描かれていました。それが上手で、もしかしたら生徒達は絵を見慣れているのかもしれないと思いました。
雨の中、室内運動場では生徒がバスケットボールをしていました。明日からのワークショップでは、この絵のイメージを真似るのではなく自分たちの絵を描いてくれたら最高だなと思いました。
さて明日から二日間のワークショップがはじまります。
心の風景を描いてもらえますように。。

2018年7月20日(金) 快晴、くもり、雨、小雨

フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ  レポート4

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ  レポート4
「バナウェからマヨヤオへ」

昨日はラガウェからバナウェへ公共バス(ジープ)で1時間、Green View Lodge に到着すると、ワークショップ前半組のアーティスト三輪恭子さんとコーディネーター小山冴子さん、バギオのアーティストRpchelleがライスワイン(地元の米酒)をのみながら和やかに話していました。
このワークショップは2班に分かれていて私たちは後半組というわけです。
谷の上に立つロッジの窓からは、水源となる山、棚田、家、道、蛇行する川が見渡せ、これからの時間と出会いのはじまりを肌で感じました。
明日と明後日は参加校をまわり、皆さんの日々の風景を少しでも共有できるように訪ねます。

朝を迎え、マヨヤオに向う前に博物館に行きました。
トライシクル(三輪タクシー)に乗って、坂を上って行くと一軒家のような博物館があります。中に入ると、所狭しと農業の儀礼に使うものや日用品等が置かれ、どれも木や動物の骨などで作られています。それらをみていると、精霊の存在があたりまえであることや、植物や動物との距離が近い事や、人間も含め生き物の魂の在処がはっきりしていることを感じました。万物との繋がりの中で人は存在している、ということを目の前に差し出されているようでした。
博物館を出て、車に乗り換えさらに先へマヨヤオへと向います。
行く先には何度も崖崩れがあり、土砂で狭くなった道を進んで行きます。
むき出しになった赤い土にカラフルな鶏、その上を見上げるとバナナの花がぶら下がっていたり、大小の棚田が続いています。ちょうど収穫シーズンですが、雨ということで、人の姿はありません。
まずは、第1校目のBanaue National High
Schoolに着きました。道路から大きな石段でぐっと谷に下ったところに学校は、2、3日前の雨で、野外体育館は半分土砂に埋まっていましたが、それでも他の教室で授業は行われています。ここは蛇行する川が見渡せるところで、その川からは温泉が湧き出ています。茂る山の斜面に作られた学校はこの地形に添いながら日々が営まれているのです。道路に出るまでのくねくねとした石段の形もそれの一部です。
そして2校目は、Tulead National High
Schoolです。ここは山の中にありますが道路の近くにあります。先生に「この村に住んでいる生き物は?」と粘り強くきくと、5mもある蛇のことやコブラやら山の中に潜むもの達がどんどんどんどんと出てきました。それを絵にしてくれたらとお願いしました。
今日の訪問はこれで終わりです。マヨヤオの中心地に着くと夕方で、ずいぶん遠くまで来た気がしました。市場で旬のアボガドとマンゴを買い、Mhilka
Lodgeで一泊しました。
マヨヤオは日本軍が突き進んだ地でもあります。

2018年7月19日(木) はれ、くもり、小雨

フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート3

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート3
「バギオまたね!イフガオへ向う」

さて、いよいよイフガオです
TALAのインターンひなこちゃんとはまたね!
まりこさん、めえこちゃん、やすさんと乗り合いヴァンに乗って出発です

まずはバギオからイフガオ州のラガウェまで山道を6時間行きます
途中、想像通り日本では考えられない土砂崩れの連続で、2車線が1車線になっているところ、巨大な岩が転がり落ちているところを避けながら行きます
まりこさんの話によると、道を作るためにダイナマイトで斜面を崩したらしく、土の定着が未だのところは、こういった雨になると崩れるようです
水も滝のように崖の下へと流れ続けています
いつ上から土砂が落ちて来るかわからない道を行かざるを得ません
そんなことをきいたら、そんなところ行けない!と思う方も少なくないと思いますが、ラガウェにはマニラからのバスも出ていますので少しご安心下さい
公共バスが通る道では、一日2本くらいのバスがやって来る直前に道路の石や岩が除けられるとのことです
バスの後に行くのが賢いと教えてもらいました
揺られ揺られ、ラガウェに到着しました!
バイクにサイドカーをつけたトライシクルが、まっすぐな道をびゅんびゅんと言って走っていく町です
すぐにイフガオの伝統文化を伝えるIPECセンターに立ち寄って勉強をして、そして棚田の町バナウェに向けて出発です
ラガウェからバナウェまでは公共バスで1時間で、
どんどんどんどん霞の中へ進んで行きます

2018年7月18日(水)だいたいくもりと小雨

フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート2

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート2
「フィリピン到着 喧噪の町マニラから天空都市バギオへ」

バギオに着くともう夜で、弱い雨が降っていました
雨季が始まっているのですね
少し肌寒かったです

CGNの拠点、ゲストハウスTALAはとても清潔快適で、安心してぐっすり眠ることができます
鶏の声で朝を知って、少ししてから犬が吠えはじめ、次は人の気配を感じます
大げさと思われるかもしれませんが、本当にコケコッコーにしか聞こえません
近くを散歩すると、天稟を担いだ男性が「たふー」というおぼろ豆腐に甘いシロップをかけて食べる朝ご飯?を売りに歩いています
サリサリ(何でも屋さん?)で琥珀色のキャラメルバナナの串刺しを買って、路地を歩き、朝開きの植物観察です
TALAでは有機栽培のアラビカコーヒー豆の販売をしていて(CGNではコーヒー農家の育成をされてきました)隣接するカフェYagamの二階では山岳の乙女がヘアーネットとエプロン姿で豆のソーティングをしています
少し手伝わせてもらうと、ひとりの乙女は私が訪れたことがあるマウンテンプロビンス州カチャクラン村の出身で、私が泊まらせてもらったアシュレイさんのことも良く知っていて、思わず夢中になって話をききました
何せカチャクランはイーグルが飛んでそうなくらい素敵な村だし、私の大好きな人達が沢山いるのです
その村で育った彼女は何を見て来たのかな、、と考えながら豆の選別をしました
お昼ご飯はフィリピン人スタッフに寄せてもらいました
どれも白ご飯に合う美味しい料理でしたが、残念ながら何て名前だったか思い出せません
「アドボー」だけおぼえています
みなさん、よかったら色々調べて食べてみてください
フィリピン料理は美味しいです
TALAでは山岳地帯の旅も提案しているので、こちらも合わせてどうぞ

竹本やすさんの紹介が未だでした
尾道に住むやすさんは、大雨の被害を受けた真備町で泥かきをしてからフィリピンに来られました
私の想像をはるかに越える現場から来られたのです
やすさんはトイレを作ります
人の体から排泄される微生物と呼吸を合わせた生き方を選んでいるのです
私には少し勇気がいります、、私って、、中途半端やなあと思ってしまいました

さて、午後からはスタッフミーティング
そして材料を揃えに町へ出かけました

2018年7月17日(火) くもりのち雨

フィリピン再訪 演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート1

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ レポート1
「いざイフガオへ」

イフガオ州の棚田の村で「農業」をテーマにした高校生の演劇制作。
その発表のための背景幕をどうやって描くかを学んでもらおうワークショップ。
3×5メートリくらいのでかい絵。
高校生20人くらいを対象にしたもの。
「関心ありますか?」
というまりこさんからの連絡がこの旅のはじまりでした

ここで登場する反町真理子さんは、フィリピンの天空都市、なんと標高1500mにあるバギオを拠点とするプロデューサーです
テーマは山岳地帯の環境で(といってしまってもよいのでしょうか?まりこさん)コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)という環境NPOを運営されて来られました
異国の地で、これだけの活動をされてきた精神力に脱帽です
そしてなんといってもその視点が鋭く優しく機転が利いていることに私はいつも感動するのです
さて、今回連絡をもらったのは6月の初めで実施は7月とのことです
一緒に担当するのは京都在住のアーティスト小池芽英子ちゃんです
めえこちゃんとは10年前くらいに京都のU空間で出会ってはいるけど、ほとんどお互いの事を知らないというところから始まりました
まずはめえこちゃんとご飯を食べたりアートのことを話したり、、そして今回について考えて行くには、まずは横浜に住む演出家花崎せつさんに話をきくことが一番!となりました
せつさんはこの演劇の骨となる部分のワークショップを担当されています
それを無しにして背景幕はあり得ません
世界遺産、世界農業遺産とダブル認定をされている世界で唯一のイフガオの棚田郡が抱える問題をみんなで考えるため、
ワークショップ参加者が様々な立場の人にインタビィーし、「聞き書き」という方法でモノローグのテキストをおこし舞台に立つのです
京都のめえこちゃん、横浜のせつさん、神戸の高濱ということで3時間以上の遠隔会議では、離れていると思えないほど、せつさんが感じた生のイフガオが伝わってきました
もっとイフガオのことを知りたい!と、まりこさんに薦めてもらった本、関口広隆さん著書「世界遺産を守る民の知恵」を早速読み進めました
イフガオはまだ、独自の儀礼も存在し神秘的なところです
フィリピンでは日本より精霊の存在を認めていると感じますが、ここの精霊はもっと強力なのかもしれませんね
お米の神様や、フォーチュンツリー(魔除け)があたりまえに生活に溶け込んでいます
さて、そんなことあんなことで、めえこちゃんと意見を交わし合い、大事に思っていることを確認しあい、2人して神戸港からフィリピンへと出発しました

あ、ここで忘れてはいけないのが、もう一方日本からの仲間が増えたことを報告します
竹本泰広さん(やすさん)
まだ会う前です

2018年7月16日